同友会の会員で、添田町の「ちゃんこ照清」の経営者の山口千寿子社長が、「自分の夢は福岡でゆっくりとくつろげる居酒屋をすることです」と経営発表会で涙ながらに報告されました。その本気さに打たれた私はその条件にあう物件探しから始めました。大名・天神地区に強い不動産の大央さんのショールーム改装の仕事をさせて頂いたつながりから、物件探しを大央さんに依頼しました。当地に決定するまで多くの問題がありましたが、その都度それをクリアーして、酒食空間「籠花」を無事開店する運びとなりました。
基本コンセプト
赤坂には天神には無い要素が沢山ある。それを探しだし集約すれば天神には無い赤坂ならではの地域特性が出るだろうと思った。天神の雑踏に比較してほんの数分で静かな安らぎのある場所が得られ、また天神の他業種混在の買い物天国に比べ赤坂はちょっと理知的な高い文化レベルの商店やオシャレなブティック、それに犬を散歩に連れてきた若いお姉さんが一休みしてテラスでコーヒーを飲む、そんな光景がぴったりするような街ではなかろうか。この赤坂にしかない赤坂の個性をお店にどう表現するか。これがこの店創りの大きなコンセプトだった。
店舗デザインの考え方
「都会の隠れ家」「大人のおしゃれな居酒屋」「おれの知ってるいい店」このような店が出来たらいいなと思いながらスケッチブックにイメージ画ができあがっていった。ビルの1階で少し入り込んでいる顔をどう表現するか、これが一番思案した。外装のイメージで業種のレベルからメニューの内容、客単価、客層までをも決定してしまう不思議な力を持っている。だから気を抜けない。近隣の環境の色や形はばらばらでどちらかと言うとまとまりが無い。そんな中に一般的な和風づくりや民家風の趣にしたら完全に回りに溶け込みすぎて何の注目もしない。そこで逆に余分な装飾は全部外してガラスだけのプレーンな無機質なもので一線を画して注意を引くようにした。ごちゃついた所にはシンプルに。そこに本物の丸太をそのまま入口枠に使い自然な素材で親しみやすさを取り入れ、あえてオートドアーで「もてなしの心」を表現した。その透明ガラスのむこうにはもうひとつの引き戸を設けその隙間から垣間見る内部の様子はまさに都会の隠れ家である。
内部はコタツ式4〜6人を基準に個別の可動式衝立を設け落着いて飲食できるように考えた。また、10人から40人位までのグループには、その可動式衝立が手軽に壁に収まる仕掛けとし、いつでもインテリアの表情を確保した。なぜならインテリアデザインはインテリアエレメントのデザインの良し悪しでその店のデザインがほぼ80パーセント位決まるからだ。
|